逆ギレさんとみちのくの虫

山形で本業を忘れて虫採りをする大学生のブログ。いろんな虫に中途半端に足を突っ込んでいます。

太牙と翠の蝉

14、15日に虫研同期の雪山、キキヤミ、後輩の御山と四人で山形県唯一の離島・飛島に行ってきました。

狙いはフトキバスナハラゴミムシとミカドミンミンです。

 

実は去年、ミカドとアオスジアゲハ(山形県では鶴岡酒田あたりにしかおらず、山形市ではなかなか見ることがない)を狙って一人で飛島に行ったのですが、時期が早すぎてミカドは惨敗でした。その10日程後に行った知り合いからミカドミンミンがかなりの数いたと聞かされ、悔し涙を流すこと一年。ようやくリベンジマッチの季節がやってきました。

 

14日

9:45に山形市を出て、12:20くらいには酒田港に着いて昼食を食べてから二便に乗る予定が、不遜なクソ後輩こと御山が寝坊し、結局30分以上遅れて出発(笑)
かなり焦りながら運転して酒田港に到着。
この時、慌てすぎてコップを埋めるためのスコップを車内に忘れるという痛恨のミスを犯します。(持っていった紙コップ300個が全て無駄に…)

ターミナル二階の海鮮丼屋に入る予定でしたが大行列で、結局酒田まで来て函館のイカ飯を食べる私とキキヤミ。
御山が信じられない量の赤身魚の刺身を購入、手で食べる。ひどい絵ヅラである。

 

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手続きを済ませてフェリーに乗船。
夜も虫を探すつもりなので二階のベンチで寝る。
午後3時に飛島に到着。船が港へ近づいていくと、凄まじいミンミンゼミの大合唱。これは期待できるぞと、下船後すぐにミカドミンミンを探しに行きます。

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2016.8.14 山形県酒田市飛島

 

 

 

捜索開始2分で発見(笑)

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透き通るような翡翠色。裏側まで美しい。

比較用の普通のミンミンゼミ。

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特にキキヤミはセミ大好きなのでミカドミンミンを見つけた瞬間、感嘆しながらへたりこみましたが、しばらくするとミンミンゼミの大合唱があまりに耳にクるので「わーすごーい、パチンコ屋みたーい」と評していました(笑)

 

あっけなく目的の虫に会えて、今回の採集はかなりユルい雰囲気に。

しかし、私の第一目標はフトキバスナハラゴミムシです。ちなみに今回のメンバーでは私以外は誰も狙っていません。

(余談ですが、去年一人で飛島に来た時はアオスジアゲハとミカド狙いで、フトキバは「ふ〜ん、こんな虫がいるんだ、ついでに見つけられたらいいなぁ〜」くらいの軽い気持ちでした。何のリサーチもせずに、フトキバ"スナハラ"ゴミムシという名前のニュアンスから海浜性のゴミムシだと思い込み、砂浜を探して薮をこぎ、たどりついた海岸は漂着物だらけという何もかも救いようのない結果でした。

 帰ってから畑の脇などにいるゴミムシだと知り、その後きちんとリサーチをして、姿形のかっこよさから憧れの虫となりました。)

 

 チャンスが一晩しかないので、日が暮れる前に紙コップを埋めてしまおうと林道へ向かい道を登って行きます。

 

ここで悲劇が二つ。

一つ目は車内にスコップを忘れてきた事実に気づいたこと。

二つ目は切り替えて側溝漁りをしていてしゃがんだ拍子に、汗で張り付いた安いズボンのケツが派手に破けたこと(爆笑)

 

名誉の為に言っておきますが、一応肥満体型ではありません。が、完全にクソデブエピソードじゃねーか!と笑いながらパーカーを腰に巻いてチャックを閉め、暑苦しい服装で二日間を過ごすはめに。

ちなみに、飛島の売店では海パンなんかも売っていないので、ズボンは2着持っていこう(笑)

 

気を取り直して側溝漁りを続けるも、アホみたいな数のオオヒラタシデムシとミミズ、トビムシ?、ちらほらと他のゴミムシが出てくるばかりで、フトキバ見当たりません( ^ω^ )

仕方ないので夜のルッキングに賭けることにして、夕食を食べに集落に戻ります。

 

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夕暮れの港町。

飛島の西村食堂で無料のレンタサイクルがあるのですが、基本的に全て借り出されているので使えません。沢口旅館で有料レンタルしているのでそれを借りました。

"しまかへ"で夕食を済ませて砂浜へ。

 

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ハマダンゴムシが可愛い。

 

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 ハマヒョウタゴミムシダマシがめちゃくちゃ可愛い。

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いくつ見つけられるかな?

他にもヒョウタンゴミムシがいたりして、夜の砂浜を歩くのは楽しい。

ちょうど、ペルセウス座流星群の見頃から少し経った時期だったので、砂浜に寝転がり星を眺めて夜が更けるのを待ちます。

 

22時を過ぎたくらいに、ミンミンゼミの羽化を探しに行きました。

蝉のなる木のような感じで居るわ居るわ、この木の幹は目視で40頭あまりでした。有り難みがない…

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私が去年飛島に来たのは、8月の10日より前あたりでこの頃は羽化の時期だったらしく今回と同じ場所で15匹ほど羽化途中の幼虫を見かけました。が、今回はなかなか見つからない。

しばらくして、雪山が見つけてくれました。

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テネラルですが、これはミカド。模様がほとんど浮かんできていません。本当に美しい。

比較になるかは微妙ですがノーマルミンミンの羽化も。

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ひとしきり満足したところで本丸を狙って、林道の側溝をルッキングします。誰もわざわざ地味なゴミムシを狙ってはいなかったので、太牙の特徴をみんなに伝えます。

丁寧に丁寧に見ていると…クソ後輩御山様が「先輩、これってなに?」と言いながら太牙片手にやってきました。あー、トゲフタオのFlash Back… 。

触角が片方かけていたもののとりあえず、ありがたくいただく。

 

この後、次々と見つかる。なんで先に私に見つかってくれなかったんや…。

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よ、容疑者確保ーーーッ!!

 

生態写真はiPhoneだとうまく撮れなかったので、とりあえず仮展足した写真を。

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ずんぐりした前胸に、超絶かっこいい無骨な牙。良い虫です。さっくりルッキングして8頭得られたので、個体数は多いのだと思います。でも不完品が多かったので、太牙を狙う人はもう少しだけ早い時期にくるといいかもしれません。

紙コップを300個も埋めていたら、朝にはオオヒラタシデムシで溢れかえり太牙どころではなかったでしょう。採集にはルッキングをお勧めします。まあ結果論ですが。

 

太牙を探して側溝を見ていくと、いろいろなゴミムシがいました。

中でもかなりヒットしたのはオオホソクビゴミムシです。ホソクビゴミの仲間自体初めて見たので、軽率に「あ、美人がいる!」と指でつまもうとすると、ミイデラゴミムシで有名なガスの噴射を食らいました。

触ろうとした瞬間可愛らしい「プュッ!」というような高めの音がして、アイロンに一瞬触れたような熱さを指先に感じて反射的に手を引っ込めました。すぐに指先の匂いをかぐも、そんなに強い香りではなく、嫌な匂いでもありませんでした。

後で指先を確認すると、ちょっと茶色っぽくなっている。

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「美人が私に(火傷?を)与えてくれた!」と大興奮していたら、他3名にものすごく冷えた目で見られました。

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走り回る美人。

 

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囚われの身となった美人。

 

一通り自分の目標はクリアできたので、他のことも楽しむ余裕ができました。

 

15日

日の出とともにに海岸へ。去年の早朝に、海岸沿いをフラフラと飛ぶアサギマダラを目撃していたので、今年も会えないかなーなんて思いながらど早朝の散歩をしました。

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2016.8.15 山形県酒田市飛島

岩の表情なんかも面白い。

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 飛島には賽の河原と言う場所があり、何となく想像がつく通り平たくて丸い石がいくつも積み重なった少し不気味な場所です。飛島の石をもって帰ると祟りがあるとかで、その伝承も何となく嫌で周辺の写真を全く撮っていません。

アサギマダラには会えませんでした。

 

ほぼ徹夜により、お腹も減ったしそこそこ疲労困憊で帰りの運転も怖いのでお店が開店するまでの間はベンチで寝ました。

 

ご飯を食べて、昨日のミンミンパラダイスへ。

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こうやって並ぶとすごく面白い。

 

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アオバハゴロモもぴよぴよしていました。なかなか見ないので嬉しい。

 

私とキキヤミはアオスジアゲハを探しに林道へ向かいます。

飛島にはタブの大木が茂っており、私が持つ山形のイメージとは大きくかけ離れています。そこをアオスジやタダカラ、ミヤカラ、モンキアゲハ、ウラギンシジミなどが飛び回ります。アオスジアゲハはたくさんいたのですがいずれもボロで、チョウは何一つ採集せずに引き上げました。

 

 飛島では1度林道に入ると、常にウシアブにまとわりつかれます。

私「ウシアブめっちゃウザいな」

キキヤミ「ぼく惑星、ウシアブ衛星って感じ」

私「天才かよ」

 

ふざけていたら雨が降ってきて、この辺りで時刻は正午に。帰る予定の二便は15:45出港予定なのでまだ時間はあります。別行動で朝から海釣り公園で釣りをしている雪山と御山を真似て、私とキキヤミも釣りをすることにしました。

300円で冷凍のオキアミを買い、貸し出してくれる簡単な釣り竿の先の小さなフックにオキアミをつけて糸を垂らします。釣りは初めてでしたが、小さな魚が入れ食い状態。フックに引っかかるかは半ば運ですが、かかると手ごたえを感じて楽しい。

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小雨に降られながら乗船までの時間をつぶし、最終的には全部リリースしました。

乗船30分前、レンタサイクルを返却して帰る準備をしていて大変なことに気がつきました。

「ミカドミンミン採ってない!!!!!」

そうです、あまりにも数が多すぎて脳がかなり満足してしまい、翅が傷つくのも嫌だし乗船前にすぐ確保できるやろ…と考えていたことすら忘れていたのです(笑)釣りしている場合じゃない(笑)

 

残り10分、大慌てで探すもこうやって焦って探すとあれだけ多いミカドがなかなか見つからない…(笑)なんとかノーマルとミカド1頭ずつ確保することができました。(色残しも難しいし、普段セミを採集しないのでこれくらいでも満足です。)

 

滑り込みで船に乗り、さらば飛島!また来ます!

 

 

17:00に酒田港に着き、行きは食べられなかった海鮮丼屋 とびしま に入って夕食。

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これで千円(税抜き)!!本当に美味しくて舌と脳味噌がとろけそうでした。

 

そのあとは月山方面で温泉に入り、フラフラと車を運転して0時前に山形に帰りました。

今回は、私以外は全員採集をしないメンバーだったので私も結構気楽に飛島を堪能することができました。多分1人で来ていたらガツガツ採集して周りを楽しむ余裕などなかったと思います。 3人には本当に感謝です。期間は短いですがきちんとリベンジもできて、かなり満足度の高い採集旅行となりました。

来年は完品のフトキバをもう少し確保すること・スレの少ないアオスジアゲハとモンキアゲハを確保すること・行っていない海岸を歩いて虫と貝を楽しむ事を目標に訪れたいと思います。